朱色の悪魔
「ッ!?朱音様!目を開けてください!!」
ためらいなく始めたのは心肺蘇生。だが、少女の息は戻らない。
男の仲間たちが狼狽して動けない中、平出だけは動き続けた。
『何してんの?ここがどこか知ってる?』
初めて彼が少女に会ったのは闇の中。
赤色に染まった少女は、彼を見て呆れたように笑った。
『逃がしてあげるよ。ほら、立てるでしょ?』
手こそさしのべられなかったが、少女の機転が彼を生かした。
少女に救われた命。彼が華月の門を叩いたのはすぐだった。
『…誰?』
少女は、彼のことを覚えてはいなかったが、平出は少女に従った。少女に救われた命を少女のために使うと救われたあの時から決めていたのだ。
だから、諦めるわけにはいかない。こんな形で少女が死ぬのを平出は受け入れられなかった。