朱色の悪魔
「朱音!!」
不意に悲鳴のような声で少女を呼ぶ青年が走ってくる。
華月魁だ。彼は頭を下げる男たちを無視して、平出が心肺蘇生を続ける少女に駆け寄った。
「全員無事か!」
直後、そこにたどり着いたのは華月を率いる男たち。
組長と、その長男で若頭の神哉と次男の留榎だ。
彼らは仲間に犠牲者がいないことに息をつくが、一人、目を覚まさない少女の姿にその表情を固くさせる。
「朱音!なぁ、何寝てんだよ。早く起きろよ。全部終わったんだぞ。残りの時間、全部くれるって言ったじゃねぇか!!起きろよ、目開けろ!朱音!!!」
響き渡る魁の悲痛な声に、男たちは黙って視線をそらす。
組長は歯を噛みしめ、神哉は黙ったまま視線をそらす。そして、留榎は無言のまま動かない少女に泣きつく魁の肩を掴む。
「魁、やめろ」
「離せっ!!朱音っ朱音!!」
「魁!!」
鋭い声が魁を止める。なおも心肺蘇生を続ける平出にも、その肩をつかんでやめさせた。