朱色の悪魔
朱音がいなくなっても、華月での未来を描けなかった俺は、親父たちの反対を押しきって華月を出た。
そしてやって来たのがこの場所。
華月から遠く離れた工業が盛んな街。
選んだ訳じゃなかった。華月から離れられればどこでもよかった。
『お前、家出か?』
放浪者のごとく、街をふらついていた俺に声をかけてきた親父。ぶっきらぼうで、がさつな親父は問答無用で俺を大衆食堂に引っ張り込んだ。
もちろん抵抗はしたけど、なんか逆らえなかった。
『お前、どっから来た』
『どこでもいいだろ』
『この辺のもんじゃねぇな』
『…』
『…行く宛はあんのか』
『ほっとけよ』
『うちに来い。お前みたいなやつらがわんさかおる』
『はぁ?』
『寮もある。お前らみたいな奴には力仕事が似合いだ』
強引に話が進められて、飯食わされて連れてこられたのが会社の寮。
そこから逃げ出すことはできたのに、なぜか出来なくて結局働かせてもらってる。