朱色の悪魔
鏡に写った自分をしばらく見つめた後、手に取ったのはとりあえず髭剃り。
その次は、ケータイでこの辺にある床屋とショッピングモールを検索。
ほったらかされてる給料袋にはそれなりの金額が入ってた。それを財布にいれようとして、やっぱやめて、ここにいたときの服を洗濯機に放り込んだ。
ついでに風呂にも入って、やるべきことを終えると布団に寝転がった。
久しぶりに生活をした気がする。天井の隅に落書きがあるのに初めて気がついた。どうやって書いたんだよ、あれ。
個の部屋でさえ、知らなかったことが多い。それほど、俺は世界から目を背けていたんだろう。
…生きてみる。お前がいない世界で、これから先どうなるかなんて分からないけど、とにかく今は生きていこう。
それで、もし、もし仮にお前以上には無理でも好きだって思えるやつができたら、その時は許してくれ。
「…朱音、もう、大丈夫だから」
そう呟くと、肩がふっと軽くなったような気がした。
そして、今の今まで感じていた気配が消えた。
“1人きり”になった部屋で、明日のことを考える。
未来を、考える。