ウサギとカメの物語 2
例えば今日、久住の口から人事部に伝えられるとして。
そこから事実確認で私とカメ男の元に人事部の誰かがやって来るでしょ。
それで、マイカーの有無とか住んでる場所とか、色んなことを聞き出されるでしょ。
そのあとで人事部内で異動の話が出ると思うんだ。
他店の社員の調節うんぬんもあるだろうから、異動の辞令が出るのはすぐでは無いはずだ。
おそらく2週間くらいかかるとして。
で、こっちはこっちで仕事の引き継ぎとかもあるわけだし、少なく見積もっても2週間から3週間くらいかな。
どっちにしたってあと1ヶ月ちょっとくらいしかカメ男と一緒に働けないんだ。
さーみーしーい~。
毎日会ってないと寂しい。
毎日顔が見れないと寂しい。
週末だけなんて足りない。
週末だけなんて満たされない。
どんより暗い気分になっていたら、奈々が隣で「あのさぁ」と言い出した。
「これを機に同棲しちゃえば?」
「…………………………ど、ど、ど」
「言えてない、言えてない」
「ど、同棲!?」
朝っぱらから腹筋を使って声を上げてしまった。
「……コズのその顔は、考えもしてなかったって感じね」
あはは、と奈々はあっけらかんと笑いながら私の反応を楽しんでいた。