ウサギとカメの物語 2
指輪はすっぽりとしっくりと私の左手の薬指におさまり、1粒のダイヤモンドが光り輝いている。
去年のクリスマスに、自分へのご褒美として小さな小さなダイヤがチャームになったネックレスは買ったけど。
あのダイヤとは比べられないほどの大きさで、これって何カラットなのかしら?と感動した。
「もう質問はしてもいいの?」
「うん。どうぞ」
「この指輪、サイズがぴったりなんだけど……どうして?私の指のサイズなんて測る機会無かったでしょ?」
あまりにもちょうどいいサイズの指輪なもんで、素朴な疑問。
元々ファッションリングすらも普段から身につけることがないので、指輪は持っていない。
自分の指のサイズが何号なのかさえ分からないのだ。
私の疑問に対して、ヤツは眉を寄せて露骨に嫌そうな顔をした。
「それ言わなきゃいけないの?俺なりにすごく頑張った部分なんだけど」
「だって気になるんだもん」
うっほほほ~。
頑張った、なんて言ってくれちゃって。
この場で「るんたった~るんたった~」って小踊りしたいくらい嬉しかったけど、我慢我慢。
さっきよりもだいぶパワーアップしたニヤニヤ笑いを隠すことなくヤツに向けていたら、カメ男は渋々ボソボソと話してくれた。
「ネット通販でリングゲージ買って、梢が寝てる間に起きないようにサイズを測った」
「ふぅ~ん。花束は?」
「……なんとなく喜びそうだから」
「この部屋は?」
「最初から一緒に住むつもりで借りた」
きゃー、きゃー、きゃーーー!
嬉しさが限界値に達して、私はぴょんぴょん飛び跳ねながらヤツの胸に飛び込んだ。
「ありがとー!嬉しい!」
と言ったら、カメ男の腕がぎゅっと私の体を包んでくれた。