[ぎじプリ] 課長の瞳で凍死します
 で、どういう間違いなのか。

 帰りに駅まで歩く道。
 気がついたら、私と課長しか居なくて。

 あまり人気のない細い通りで、線路沿いの金網に課長が手をかけて。

 なんだかわからないが、キスしていた。

 でも、翌日からはいつも通りの課長だったので、夢だったのかな、と思ったのだが。

 そのとき、後ろ頭に当たった金網の冷たさも、課長の唇の温かさも、全部覚えているので。

 夢じゃない可能性が高いのだが 追求するのが怖いし、したくない。

 まあ、本当だったとしても、課長もなにかの弾みだったんだろう。

 そう思うことにしていた。

「沢田。
 ……沢田っ!」

「は?
 ああ、はいっ」
と課長に呼ばれていたことに気づき、立ち上がる。

 課長はひとつ溜息をつき、ボールペンの背で、私の後ろを指差した。
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