[ぎじプリ] 課長の瞳で凍死します
「ああっ。
 監査役っ」

 人の良いおじいちゃんという印象の監査役が、何故か自分でコピーを取ろうとしている。

「私がやりますっ」

「ああ、いや、いいんだよ。
 二、三枚だけだから、自分でやろうかと思って」

「いえっ。
 わたくしがっ」
と言ったのだが、一枚目で、トナーがなくなってしまった。

 何故か、側に置いてあるはずの予備のトナーがない。
 それに気づいた課長が言う。

「沢田、すぐ取って来い。
 二分以内だ」

 ええっ!?
 トナー、地下なんですけどっ。

「……早く行け」
とあの眼光鋭い目で脅され、はいっ、と走って行く。

 地下の備品室に行き、トナーを探す。

 うわ、何処だろ。

 今まで、辞めた堀田さんの担当だったからな。

 場所がわからず探してたなんて言ったら、引き継ぎノートをちゃんと見てないからだ、と課長に激怒されそうだ、と思う。

「あ、あれだ。
 あの箱っ」

 よりにもよって、高い場所にある。
 脚立を持ってきて、上に上がった。

 箱の上にもうひとつ、横置きに箱が置いてあったらしく、それが落ちてきて、顔面を直撃した。

 ひゃっ、と悲鳴を上げたときには、足はもう脚立を外れていた。
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