おばあちゃんが死んだ日
「美月さんはあの患者さんの何を見てたんですか?何のために実習をしてるんですか?」


呆れた表情の指導者。
これで3度目の実習だったが、こんな事を言われたのは初めてだった。
曖昧な返事しかできない自分がとても情けなかった。


「美月さんは患者さんのことが見れてなかったんだよ。『病気』っていう視点でしか捉えられなかった」
「そんなこと……」
「自覚ないの?患者さんの事について何も言えないじゃない」


患者さん自身をしっかりと見ていられたら悲しむことができたのだろうか。
この質問にもスラスラと答えることができたのだろうか。
しかし患者さんが死を迎える度に毎回メソメソと泣いていてもこの先やっていけはしないだろう。
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