円満破局
くるしい
はぁ、と息を吐き出す。
空気が白く染まる。
子どものように何度も繰り返しながら、心が震えないのを少し不思議に思う。
まだ彼のことを榎本くんと呼んでいた去年だったら。
高校生にもなってはしゃいで、それを見たはるくんが笑いながらからかってきて。
そんなどこにでもありそうな日常で、とびきり愛おしい時間を過ごしていたのに。
それが今ではありえないものになってしまっているんだ。
ゆっくりとしたまばたきは、まるでただ瞳を閉じたよう。
乾いた瞳を塞ぐことで現実から逃げるも、意味はない。
季節はクリスマスを目前に控えた冬になり、空気がすっかり変わっている。
わたしがはるくんと別れてから早いもので、もう1ヶ月が過ぎていた。
秋の終わり際のあの日。
呆気ない別れのあと、わたしたちの関係は変わった。
お昼も帰りも別々。
休み時間におしゃべりすることもないし、笑顔を向けられることもない。
必要最低限だけの会話は、一言一言が強調されて、以前よりずっとその響きを噛み締めてしまう。
わたしはひとりで、彼はたくさんの人に囲まれていて。
その姿に憧れて焦がれる……まるで出会った頃のよう。
だから、彼のそばに誰かがいることが苦しくて仕方がないの。
わたしはもう立つことができないその場所にいることが、羨ましいと思う。
手放したのは、自分のくせに。