円満破局
まだすき
かつん。
普段と変わらない様子で廊下を歩いていたわたしの足元……上靴から響いた音。
教室移動のために廊下をひとりで歩いていたわたしは、思わず足を止める。
足の裏を返せば、かかとのところのあたりに光を反射して光る画鋲。
どこかに落ちていたものを踏んで、突き刺さってしまったんだろう。
なんとかしてそのまま取ってしまおうとすると、教科書なんかの荷物を抱えていたせい。
ペンケースや電子辞書を落としてしまう。
「あー、もう……」
ため息を落とす。
年明け初めの授業の前からなんて散々なんだろう。
もういい、画鋲は教室に着いてから外そう。
こんなところで取ろうとしたのが失敗だったんだよね。
落としたものを拾い上げて、埃を払いながら移動する。
かつん、かつん。
鋭く響く音を耳にしながら、わたしは目的の教室に向かう途中でかつ、と足を止めた。
通りかかった教室の中から……はるくんの声がしたから。