円満破局
その表情は、さっきまでと少しも違わない。
まるで朝には「おはよう」と言うように。
家に帰る時には「バイバイ」と言うように。
なにかしてもらった時には「ありがとう」と言うように。
悪いなと思った時には「ごめんね」と言うように。
とても、自然にわたしを「好き」だと口にした。
彼の言葉があまりにも優しくて、愛おしいから、わたしを傷つけていく。
胸が、心が痛い。
あまりにもはるくんが予想外な発言をしたものだから、友だちがみんなして思わずぽかーんとしてしまっている。
「そ、そうなんだ……?」
「あー、じゃあ別れたかったわけじゃないってことか……?」
少し遅れて言葉の意味を理解した彼らに動揺が走る。
なんて言ったらいいのかわからないといった表情で、それはきっとわたしも同じ。
はるくんがあまりにも普段通りの態度だから、呆然としてしまっているの。
「そうだよ。だって俺は笑花と別れたいなんて1度も思ったことなかったんだから」
そう言ってはるくんは笑う。
ははっと軽やかに、爽やかに、はるくんらしく笑った。