円満破局
はるくんとの体の隙間に手を滑りこませて彼の胸をぐっと押す。
力いっぱい押しているはずなのに、全く離れる様子がない。
「は、離して」
「嫌だ」
「はるくん……っ」
「もう離したくない」
きっぱりと告げられて抑えこむように掻き抱かれる。
カーディガン越しに彼のぬくもりがわたしの掌に伝わって、あつくて仕方がない。
「なんで、……なんで笑花は俺から離れることができたんだ。
俺はこんなに苦しいのに……っ」
久しぶりに感じるはるくんを全身で受け止めてしまう。
そのまま背中に手を回したくなるも、唇を噛み締めてこらえる。
「本当は、笑花が周りを気にしているところを見るのが辛かった。
どんどん俺以外のことを考える笑花を見るのが苦しかった」
「……っ」
「それでも、笑花が苦しまなくて済むならって距離をとったのに、俺は想うことさえも許されないの……?」
きしりと胸が音を立てる。
今までにこんなにも胸が締めつけられて、切ないほどに誰かを想ったことはない。
はるくんだけ。
わたしにとって、はるくんだけが、わたしをここまで揺さぶる。
そのことが、性懲りもないことに、苦しくも嬉しいんだ。