円満破局
はるくんの溢れた気持ちに涙がこみ上げて、わたしが必死に形作っていた世界は滲んでいく。
優しく彼の胸を押す。
自惚れかな?
名残惜しさを感じる仕草でわたしたちの間に隙間が生まれる。
足がようやく床に着いたというのに、まだ浮いているみたいに心がふわふわする。
今までにないくらい近い距離で彼を見上げた。
「どうして……どうしてわたしなんか相手に、そこまで望んでくれるの……」
わたしは今まで知らなかった、彼自身は最低だと言うはるくんのことを嫌だとは少しも思わない。
とても人間らしくて、ずるいほどに心惹かれることは変わらないの。
だけど、わからないと、思う。
わたしが彼をそんな風にさせるのは、どうして?
「言っただろ?
笑花が好きだって、彼氏にしてくれるかって」
「っ……」
「俺の想いはなにひとつ変わってないんだよ」
その言葉に、瞳からこみ上げた雫が、ぐしゃぐしゃに歪んだ頬を転がり落ちていった。
『好きだよ』
あの日の君が、目の前の君が、わたしに痛いほど甘く囁いた。