円満破局
「俺の名前に反応してるよね?
どうかした?」
首を傾げるその仕草だけできらきらと輝いているよう。
目の奥がちかちかとして、瞬きを繰り返す。
「わたしの友だちと榎本くんが同じあだ名で……その、ごめんなさい!」
「え⁈」
小説をぐっと掴んで席に着いたまま、ばっと頭を下げれば彼が慌てた声を出す。
わたしの机に手をついて、どうして謝るの? と眉を下げる。
「だって……わたしの反応が気に障ったからこうして声をかけてきたんだよね?」
「違うよ。ふとね、不思議に思っただけ」
そんな風に気にしてたんだ、と榎本くんが笑う。
爽やかに、周りの視線を集めて。
クラスメートからのじりじりとした気配にどうしたものかと思いつつ、わたしもその表情にどきどきする。
そして怒っていなかったことにほっと息を吐いた。
「そんなに反応しちゃうくらい、その友だちのことが好きなんだね」
「うん! あのね、ハルカちゃんは本当によくハルが似合ってて、優しくて可愛いわたしの大切な友だちでね、」
顔を見上げて、頬を緩ませて、
「大好きなんだぁ」
そう、満面の笑みを浮かべた。