円満破局
そっと顔をそらして、榎本くんはそっかと呟く。
さりげなく口元が手で覆われた。
かすかに除く耳が太陽の下にいたみたいに熱を含んだ赤に染まって……。
ああ、榎本くんもハルカちゃんと一緒だ。
「榎本くんは、名前がよく似合う人だね」
「え? 名前?」
「……うん。榎本くんって春の優しい晴れの日のおひさまみたいなんだ」
纏う雰囲気が柔らかく、ぬくもりを感じる。
とても優しい、〝晴也〟くん。
少し言葉を交わしただけでも人気がある理由がよくわかった。
ふわふわと笑って見せると、榎本くんはわたしと目を合わせる。
「それなら、西田も」
「わたしも?」
え、西の田んぼだけど。
もしかして、田舎っぽいとか地味とか思ってるのかな?
否定できないけど、さすがにちょっとショック……とへこんでいると、
「だって笑った顔、本当に花みたいだから」
……花?
どういうことだろう、と首を捻る。
え? え? と疑問符を飛ばしている様子がおかしかったのかな。
榎本くんは思わずとでもいう風に、ふはっと笑みをこぼした。
「笑花、でしょ?」