円満破局
受験勉強を必死で頑張って、わたしの成績にしてはランクの高い憧れの高校になんとか受かって。
無事に高校生になり、可愛い制服を着た新しい日々が始まって。
それなのにわたしは友だちができずにひとりきり。
西田さんと呼ぶ人はいても、下の名前で呼んでくれる人なんていなかった。
きっとわたしの名前なんてみんな知らないと、そう思っていた。
悲しいけど、わたしなんか地味でつまらないんだから仕方がないことだよね、とそうそうに諦めていた。
なのに、君が。
君だけが呼んでくれた。
誰も呼ばないわたしの名前を口にしてくれた。
笑花。
笑う花。
わたしには似合わないこの名前は、こんなにも甘く優しい響きを持っていた?
ううん、……違う。
榎本くんが呼んでくれたから、そう感じたんだ。
「……ありがとう」
わたしは嬉しくてこそばゆくて幸せで。
たまらなく、泣きそうに笑った。