円満破局




はるくんの友だちも、クラスメートも、みんな知らない。

きっと誰もが、わたしがはるくんに告白して運よく付き合うことができたと思っている。



わたしでさえ本当はそうだったんじゃないかな、なんて思うことがあるくらいだもん。

当然だよね。



だけど、わたしたちの交際のきっかけは。



「西田が好きだよ」



────告白は、はるくんからだった。






「……え?」



彼の言葉にわたしは目を見開いて、手にしていたプリントを落としてしまった。



先生に頼まれたプリントのホッチキス留めの作業を榎本くんとふたりでしていた放課後。

暖房を切った教室中にまとめ終わったプリントが散らばるも、それどころじゃない。



聞き間違いでなければ、今、榎本くんの口から〝好き〟という言葉が聞こえた気がしたんだけど……。



「……え⁈」



混乱が激しくなり、顔が熱くなる。

ぐるぐると目が回ってしまいそうなほど、どきどきする。



「だ、誰が?」

「俺が」

「え、榎本くんが?」

「ふはっ。
うん、……俺が」



吹き出して、榎本くんが笑う。



ああ、もうどうしよう。

わけがわからない。






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