円満破局
「西田が笑うと、嬉しくて……可愛くて。
それでずっと見てたいって思うんだ」
「っ、」
「これからずっと君の隣に立ちたいんだけど、いい?」
口元を両手で押さえた。
そんなのいいに決まってる。
他でもない君が言うのに、だめなんて言うわけがない。
わたしが、わたしの方がずっと、それを望んでいた。
分不相応なのに、そばにいたいと思っていた。
「わたしを、彼女にしてくれるの?」
「うん。
……俺を、西田の彼氏にしてくれる?」
優しく目を細めて、はにかむように笑う。
えくぼができて、可愛くて、大好きな榎本くんの笑顔を向けられる。
彼をひとりじめしていることが、こんなにも……胸をぎゅうぎゅうと締めつける。
「うん────」
ぶわっとあっという間に涙が浮かぶ。
彼氏にしてくれる? って。
好きだよって。
そう、榎本くんが言った。
このわたしにだよ?
夢みたいに嬉しいのに、夢じゃないからもっと嬉しいと思う。
わたしの理解を超えるほどの幸せに、涙がこみ上げて止まらない。
掌で涙を拭っていると、榎本くんにその手を止められる。
そのままとても丁寧な仕草で、ゆっくりと指が絡められた。
「榎本くん……?」