円満破局
触れ合う指から心臓のどきどきとうるさい鼓動が伝わりそう。
驚きのあまり涙は止まり、榎本くんと目を合わせる。
「はるって呼んで」
まつげに引っかかっていた涙がぽろん、と頬に落ちた。
「って言っても、西田にとって〝はる〟は友だちのことなんだよな」
榎本くんがくしゃっと顔を複雑に歪めて、そっとどこかへ視線をそらす。
初めてわたしたちが言葉を交わした時、ハルカちゃんの話をした。
そのことを榎本くんは覚えていてくれたんだね。
でもね、
「わたしにとっても〝はる〟はもうハルカちゃんのことじゃないよ。
はる、くん……のこと、です」
君に告白されるずっと前から、わたしの〝好き〟は今にも溢れそうなほど、想いは募っていて。
いつの間にか、耳にする〝はる〟はハルカちゃんを連想させるものから、はるくんを連想させるものへと変わっていた。
それくらい、はるくんがわたしの中で大切な存在になっていたんだ。
かーっと頬が勝手に赤く染まる。
はるくんもわたしと同じように、真っ赤な顔をしている。
そのことがたまらなく嬉しかった。
ふたりして顔を見合わせて、互いの頬の熱が目に見えてわかることにくすくすと笑った。
「……笑花」
「っ、」
はるくんがわたしの名前を呼んだ。
首を傾げて、恥ずかしそうに息をもらした。