円満破局
「わたしが彼女より先に告白してたら、その返事って違ったのかなぁ……?」
さっきとは違う意味で震える声が、耳に届く。
届いてしまう。
その言葉に対して、はるくんはなにも言わない。
そっと覗いてみても、彼はわたしに背を向けているせいで表情もなにもわからない。
だけど、女の子は「ごめんね」と頭を下げて駆け出す。
……わたしのいる方に。
柱の影でびくつくわたしの存在に気づいた彼女が涙の浮かんだ大きな目を見開く。
そして唇をぎりっと噛み締めて、すれ違いざまに、
「釣り合ってないよ……っ」
そう、堪え切れなかった恋心がこぼれ落ちるように、小さく吐き捨てた。
可愛い彼女。
わたしよりずっと、はるくんに釣り合う、彼女。
だからわたしは名前も知らないような女の子に「釣り合わない」って言われたって、仕方がないんだ。
わたしもそう思うもん。
だってはるくんは去年も今年もクラスの人気者なのに、わたしにはこれといった友だちがいない。
クラスの人は声をかけてくれることもあるけど、明らかにはるくんのおまけだし。
こんなつまらないわたしと頻繁におしゃべりしてくれるのなんて、はるくんくらいしかいない。