円満破局








がらりと教室の扉を開ける。



わたしのひとつ前の席に座って、残っていたクラスメートと話しているはるくん。

音に反応して顔を上げ、わたしの姿を捉えた目元が柔らかな曲線を描く。



「笑花」

「待たせちゃってごめんね」

「はは、大丈夫。
俺もちょうど用事あったし」



ちくりと細い針が胸をかすめたように痛む。

誤魔化すように笑って、そっかと返した。



「晴也、帰るわけ?」

「あたしたちを見捨てるんだ」



そんな風に恨みがましく彼を見上げるのは、弓道部に所属している明口(あきぐち)くんと木原(きはら)さん。

明口くんは数少ない、彼を『晴也』と呼ぶ人。

だから他の人より印象が強いんだよね。



「いやいや、課題出さなかったお前らが悪いんだろ!」とはるくんが笑っているから、この前の数Ⅱのことかな。



はるくんは勉強も得意だから、わたしもよく教わるんだ。

先生よりわかりやすくて、彼は本当になんでもできるすごい人なんだよね。



はるくんがふたりの課題を見てあげてたみたいだし、終わるまで待ってた方がいいのかなぁ。

そう思いつつ首を傾げていると、はるくんが机に置いてあったわたしの鞄を持ち上げる。






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