星々は呼吸する
なんとなく泣きたい気分になって、黒崎に背を向けた。いいや、こんな男は放っておこう。私は部室に戻る。
……星なんか、少しくらい目を離したって逃げやしないっての。さっさと気付け、ばかやろう。
心の中で悪態をつきながら、屋上の出入口へと一歩を踏み出す。――その瞬間、背後から思い切り腕を引かれた。
「すばる、」
「っ、なに?」
「今、星流れたよ」
「えっ! どこどこ!?」
慌てて空を見上げてみたけれど、もう流れ星の姿はない。……当たり前か。あんなのは一瞬で見えなくなるから。
タイミング悪いなあ、と肩を落とした私の耳に届いたのは、くすり、という微かな笑い声。ふと横に目をやると、黒崎が柔らかく微笑んでいる。
「……今、私のこと馬鹿にしたでしょ」
「ううん。面白いなと思って」
「……子供みたい、って?」
「うん」
それを世間では馬鹿にしてるって言うんだよ! 目一杯彼を睨みつけ、そして私はもう一度夜空を見上げた。
また流れないかな。あと一回だけでいい。
……そうしたら、私は。