星々は呼吸する
思考を巡らせながら、微かな変化も見逃さないよう、目を凝らして星々を見つめる。
そんな私の肩にふわりと温かな感触があり、振り向くと、――セーター姿の黒崎が、自分の着ていたブレザーを私の肩に掛けてくれていた。
「寒いんでしょ? これ貸す」
「……黒崎、風邪引くよ」
「俺は平気」
言いつつ、彼はまた望遠鏡を操作し始める。今度は月ではなく、小さな星たちの方にレンズを向けるようだ。
熱を、感じる。ブレザーから伝わる黒崎の温もり。自分の体の中からじわじわと沸き上がるような、この感情。
どうしていいかわからない。好きになりすぎて、気持ちのやり場が見つからない。
「黒崎、……星、好き?」
「うん」
私のことは? ――素直にそう聞けたら、どんなに楽だろう。
臆病者だ、私は。ただの怖がり。だって、黒崎がなんて答えるかなんて、もうわかりきっているから。
彼は私を見ていない。彼は私のことを何とも思っていない。
私の一方的な片想い。だから今も、こうしてただ隣に立って、空を見上げることしかできない。