オレに命令させてやる
オレに命令させてやる
「すごーい。魔法みたい」
初めてオレの前に座ったおまえは、オレのデモンストレーションに目を丸くした。
おまえの隣から先輩社員がにこにことおまえに話しかける。
「半年もすれば、このくらいのプログラムは君にも組めるようになるよ」
「本当ですか? 私も早く魔法使いになりたいです」
おまえは嬉しそうに先輩社員に微笑んだ。
おいおい、そんな奴と見つめ合ってたって、魔法使いへの道は遠いぜ。
おまえはオレだけ見つめていればいいんだ。
「あーっ。もう、なんでダメなの?」
オレのダメ出しに、おまえはふくれっ面でぼやく。
知ってるだろう。オレを動かしたかったら、段取り根回し怠るな。
空気読んだり、気を利かせたり、そんなことオレはしない。
行き先すべての信号が青じゃなきゃ、オレは走り出さないんだ。
「ちっとも言うこと聞いてくれない」
何度も繰り返しているうちに、おまえはとうとうふてくされて、机に突っ伏した。
ふくれっ面は次第に泣きそうな顔に変わる。
しょうがないな。
オレは目を伏せて、おまえのお気に入りキャラクターを楽しげに踊らせて見せた。
ようやく顔を上げたおまえは、踊るキャラクターを見つめて少し口元に笑みを刻む。
そして表情を引き締め、背筋を伸ばした。両手で軽く拳を握り「よし」と小さくつぶやく。
「絶対、言うこと聞かせてやるんだから」
その意気だ。
ふたたび魔法の呪文を組み立て始めたおまえは、ほんの少しだけど成長したような気がする。
おまえが呪文を自在に操れる凄腕魔女になったら、その時は最高のパフォーマンスを見せてやるよ。
そしておまえの命令なら、なんでも聞いてやる。
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オレ様PCと新人プログラマーのぎじプリでした。