奪うなら心を全部受け止めて
プロローグ
【BAR Crash love…】
カランコロン…。
「いらっしゃいませ」
「うっす、こんばんは」
「…あ ぁ、…少しお久しぶりですね~」
「ああ…。何だか仕事が立て込んで…。息抜きしたい時には来れず、結局、一段落してからだよ。やっと来れたって感じかな」
「それはお疲れ様でした。…すみません、今夜は、こちらにの席にお願いします。
いつもので?」
ん?そういうことか。
「あぁ、そうだなぁ…。ぅん…バーボン、ロックで」
「かしこまりました。
すみません、いつもの“指定席"。今夜は先客が…」
「ん?(ぁ…)否…。俺の専用って訳でもないから。今夜は…あの人のモノだ。…。
…暫く来なかった罰かな」
「どうぞ…」
「ん、有難う。ところで…いつもあんな風なのか?」
奥の席にチラッと目をやった。
「え?あぁ、ああ、あの方ですか?そうですね。カクテルを注文されて、少しお飲みになられると…大抵はあんな感じになってしまいます」
「そうなんだ…。じゃあ、もう一見さんって訳でもないんだな…」
「はい。少し前から来て頂いてますね。三度…、四度目のご来店といったところでしょうか。
あの…この話は内密にお願いしますよ?お客様のことなので。聞かれて答えといて何ですが」
「ああ、それは心配ない。口は堅いから。誰かに話す事ではないから。…そう…かぁ」
カウンターの端。一番奥の席に座り、テーブルに伏せている。顔は見えない。奥を向いている。
眠っているのか…。
まさかとは思ったが、…驚いた。何故この店に居る。…単なる偶然なのか。
なんにせよ、間違いないだろう…。
相変わらずだな、…飲めもしないのに。
そんな様子じゃ…。
俺は…。