奪うなら心を全部受け止めて
三日目の朝。
カ、チャ。
どうやら、いらっしゃったようだ。
今朝のワイドショーの占いは外れたな…。
“会いたい人”は…現れた。
どうした…、躊躇しているのか。
玄関には革靴。俺の物だ。
優朔の物かも知れないと思っているのか?
判断がはっきりつくほど優朔の物を知っているとは思えない。
だとしたら、優朔だと判断するか…。会社に行ってるはずなのに何故いるのかって。
足音が近づいて来た。
カ、チャ。
「…優朔さん?…いらっしゃるの?っ…松下…」
まさか、俺が居るとはな。相当、驚いたようだ。
「おはようございます、奥様。驚いたのはこちらです…これは…なんと言ったら良いのか、…アポなしのいきなりの訪問。
…私と逢い引きでしょうか?」
「あ、あ、あの、松下」
「はい。私に何の御用でしょうか?
この部屋は私の部屋なんですが、ご存じなかったのでしょうか?」
「…松下の…部屋?」
「はい、そうです。…立ち話もなんですから、こちらへ、…お掛けになってください。
お茶をいれて参ります。
あ…すみません。奥様は紅茶がお好きでしたね?生憎、私は珈琲党なものですから。紅茶はおいてないんですよ。
…いらっしゃると解っておりましたら、ご用意しておきましたものを、…失礼をお許しください」
「…」
「すみません。珈琲ですが、一応どうぞ」
「…有難う」
「…奥様。早速ですが。私、個人の問題として、貴女を不法侵入で訴える事も出来るんですよ?
…お話して頂けますか?
ここに入った事の経緯を、説明して頂きたい」