奪うなら心を全部受け止めて
「…決して、頬を緩めてベッドを整えている訳ではない…」
「松下…貴方…もしかして…」
「…はい。奥様の頭に浮かんだ通り…。お察しの通りで間違いないと思います。
…口には出さないでください。…これは奥様の胸に収めておいて頂けますか?」
「…驚いた。貴方って人は…本当に出来た人ね。
流石、会長が社長の頃から側におく訳だわ。
…優朔さんも安心ね」
「少し個人として喋り過ぎました。失態です」
奥様は大きく首を振る。
「…はぁ。低俗で下品で、邪推な真似をしてしまったわ。貴方に優朔さんの思いを教えて貰うなんて…。
私は優朔さんの何を見ていたのかしら。
…本当、いつだって誠実に接してくれているのに…。私って本当に最低…。
充分解っているのよ…。だから、余計、嫌だったのかも知れない。
いっそのこと、お互い冷たく無視し合っている方が良かったのだと思う。その方がきっと楽なのかも知れないわ。体裁だけの奥様の役目もはたさず、本当の意味で好き放題、自由にふるまえば。
優朔さん…中途半端な優しさはない方がいい。…私達みたいな夫婦には。
だからと言って、私のした事は許されない事だけれど」
「こんな事…。それこそ口出ししてはいけない事ですが…。くれぐれもおつき合いされる方には充分注意をされてください。
…ドップリと深い関係の方はいらっしゃらないとは思いますが、…快楽だけではなく、TAKAGIの奥様と知って近づく者も居るかも知れません。いえ、それがほとんどです。遊びといっても、充分配慮されて、お気をつけくださいますよう。…どうか、上手く立ち回ってください。
隙のないよう、色々と、始末に困る事のないよう…お解りですよね?お願い致します」
「…有難う、松下。フ。そんな人にしか相手にされないのよ。…気をつけるようにするわ、優朔さんに迷惑がかからないように」