奪うなら心を全部受け止めて
駅で待ち合わせることになってる。
私服で外で改めて会うなんて、初めて。変じゃないかなぁ。
結局、先輩が卒業するまで、千景さんとデートはしなかったから。
でも、ほぼ毎日、一緒に帰ったな、手を繋いで。色んな事話して。
不思議と緊張もしないし、話題も尽きないし。
最初に悩みを聞いて貰ったから。だからだと思う。
…よく話せたな〜…不思議。あんなに格好いい人に、いきなり話し掛けられたのに…。変な気取りがないからかな〜。
人を緊張させないというか…。
「佳織〜」
あ、千景さん…。
「俺、遅刻?佳織、早くないか?
待たせただろ?大丈夫だったか?変なヤツに声かけられなかったか?」
「もう、質問責め」
「ああ、ごめん、ごめん。一緒じゃない時に、なんかあったら大変だからな、つい」
「大丈夫です。時間より早く来るのは私がそうしてるだけです。待ってないです。大丈夫です。千景さんだって遅刻はしてないですよ。
変な人に声はかけられてないです」
「ん、解った。じゃあ、行くか」
「はい」
「ほい」
当たり前のように今日も手を繋ぐ。うわっ、…目立つかも…。
「微妙な時間だけど、映画観てから何か食べる?
それとも、観る前に何か軽く食べとくか?」
「ん〜そうですね、どちらでも。我慢出来ない程でもないし」
「だよなぁ。そう、だ、な、あ、パンケーキとか、食べてみる?そことか、どう?」
「あ、言われると、…食べたいです」
「じゃあ、そうしよう」
「はい」