奪うなら心を全部受け止めて
千景さんは甘くないタイプのモノを選び、私は、アイスやフルーツが沢山盛られたモノを注文した。
流行っているとはいえ、家族連れのような男性客も少ない。
店内は、やはり女性が圧倒的に多い。カップルは尚少なかった。こういうお店、甘いものにつき合ってくれるのは有り難いな。
千景さんのような格好いい人は居なかった。
贔屓目に言っているつもりは無い。千景さんは目立っていた。背も高いし、綺麗な顔。
今更だけど、一緒に居るって…困ってしまう。
「ん?どうした?…思ったのと違ったのか?……美味しくないのか?」
正面から顔が近づいた。質問の言葉。周りに聞こえないよう気を遣って、小さい声で話し掛けてくれたのだろう。
「ううん、美味しいですよ。凄く」
「そうか、ならいい。……凄い甘そうだな、佳織のは。じゃあどうしたんだ?」
うっ。これは率直に言った方がいいのかな。
「…あのですね。…千景さんが格好いいから、みんな見てます。だから、私…一緒に居る私、…私でいいのかなって」
少し小声で話した。
「…何言ってる。佳織は俺の彼女だろ?それに佳織は可愛い…俺に似てな。だろ?兄妹って思われてるのかもな。この年齢で仲いいってどうなの?ってみたいな」
悪戯っぽい顔にドキッとさせられた。これもデート版カムフラージュだよね?
「…有難うございます」
「ん?俺なんか大した事ない。先輩とだったら、もっと大変だろ?二次元の王子様の実写版だもんな。…。変に気にするなよ?」
いやいや、タイプが違うだけで、どちらも格好いいんだから…。もう…。
「…はい」
「気にした罰な」
そう言って、私が食べようと刺していた苺をそのまま手を引きパクっと食べて終った。
あ、もう。苺が………これがカムフラージュというのなら、見事に演じてると思った。
…楽しんでやってるのかな。ちゃんと私をドキドキさせてるなんて、凄いです。
ドキドキのメーターが上がります。