奪うなら心を全部受け止めて


解っていた事とはいえ、宣言通り、映画館で千景さんは寝て終った。腕を組んでいる。

パンケーキ、食べちゃったせいかも知れない。
だとしたらなんだか可愛い。お腹満たされて眠くなるなんて。
折角、恋愛物じゃなくてアニメにしたのに…。
観れなくて、後で残念がっても遅いんですからね。

ん?スースー眠る千景さんが私の肩にもたれて来てる。うわーっ、近い。それに、首に短い髪の毛が触れるから、何だかくすぐったい。
どうしよう…ドキドキしてる場合じゃない。押し返そうかな。できないけど。…取り敢えず、映画、観よう。

もうエンドロール。終わってしまう。
どうしよう、千景さん起こさないと…。右の肩…重い。すっかり熟睡してるし…。
動いたら起きるかな。起きてくれた方がいいけど。それとも、優しく声かけて揺り起こした方がいいかな。

「ち、千景さん。起きてください。みんな帰ってますよ。もう…千景さん、千、景、さん、映画、終わりましたよ?」

ガクッとなって首がずり落ちそうになった。
うわ、うわっ。
慌てて思わず顔を両手で挟んだ。
ムクッと起きた千景さんの顔が近づいて来た。
あっという間だった。
千景さんと衝突して終った。…唇が…。これは…事故。…?。事故だよ。
これでは顔を包んでいる私からしたみたいじゃない…。どうしよう…離れなくちゃ…。
んん、ん?!え?何?何だか押されてるみたい?意識があって、されてる感じがする?!
え、え?
片手を背中に回された。もう片方の手で後頭部をガッチリと掴まれた。
ん?、ん、んん!?ちょ、ちょっと?どういう…。もう、パニックーーッ!千景さん!

「………佳織、好きだ…」

えー!告白?何?カムフラージュの演出?
でも告白?えっ、キス?カムフラージュの?…だよね。だよね。

「あ、…あぁごめん。…寝ぼけた…かも。…はぁっふぅ」

…欠伸してる。えーー!!…だよね。…ですよね…。はぁ、めちゃくちゃバタバタしてドキドキしたぁ。
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