奪うなら心を全部受け止めて
嫉妬にかられたようなものだ。
俺は、…まだ佳織としてなかった深い口づけをしていた。
衝動…子供だな、俺。誰にも取られたくない、そんな気持ちがそうさせたんだ。触れるだけの口づけでは収まらない衝動。
無意識じゃない。解っている。…千景に取られる訳にはいかない。そう思ったんだ。
俺も相当矛盾している。
何も心配ない状況なら、もうカムフラージュは要らないんじゃないか…。でも、それを口に出して解いてしまったら…。改めて何の障害もなく、本当の恋が始まってしまうんじゃないかって…。
だから俺は千景の心を縛るのか…。そうだ。
千景…。一番安全で、でも、一番危ない関係性を佳織と築かせてしまった。
佳織を胸に抱き込んだ。
「安心したよ。佳織の反応がびっくりしてたみたいだったから。良かった。今日泊まってくか…」
「え」
「…こんな事、敢えて言うもんじゃないけど。何もしない。襲ったりしないから。…宣言するのもどうかと思うけど…。
大人になるまではシない。佳織が大人になるまでは、シないって決めてる…一応な。大事にしたいんだ。あ〜、…なんて言うか、キスはするぞ?めちゃめちゃする。
これからは、大人なキス、今みたいなのも一杯する。あと、抱きしめる。一杯な?
急に泊まる事、嘘つけるか?友達の家に泊まるって言える?」
胡座をかいて座っている優朔と向き合っていた。
泊まる。って…。ドキドキ…。
はぁ…。優朔…。ドキドキ過ぎて直ぐ言葉が出ない。思考も完全に停止している。
「…うん。果林ちゃんに協力して貰う。果林ちゃん家に泊まる事にする。
…果林ちゃんにも、うちに泊まった事にしてって、頼まれる事あるから、大丈夫」
「そうか…。俺、佳織を悪い子にさせてるな」
「ううん。…一緒に、私も…もっと優朔と一緒に居たいから、大丈夫」