奪うなら心を全部受け止めて
「じゃあ、果林ちゃんと約束出来たら、買い物行こう。晩御飯、一緒に作ろう。佳織は何が得意?」
「うっ…得意といえるかどうか、ハンバーグなら、…なんとか大丈夫かも」
「じゃあ、ハンバーグの材料買いに行こう。あと、お泊りセットもな」
「あ、…はい…」
お泊りセット、か…。ずっと置いておいていいのかな。
「そうと決まったら、早速果林ちゃんに連絡だな」
「はい」
何もしない宣言をされても、…やっぱりお泊りするって…ドキドキするし、恥ずかしいし。ずっと一緒に居るんだ。
ご飯食べたら、お風呂にだって入るよね。
寝る時は…、やっぱり一緒なのかな…。一緒だよね。
キャー…、眠れないよ、きっと。ドキドキして。
「佳織?佳、織?」
「あ、は、はい」
「焦げるぞ。ほら、もういい感じじゃないか?」
「あ、は、はい」
「心配?」
「え?」
「色々、心配?急にお泊り決めたから」
「あ、はい。あ、いいえ、はい」
「初めてだもんなぁ、一緒に朝まで過ごすの」
ぼっ。そんな事、言葉にしないで。朝までって。
あ、…。
ハンバーグを返す手に、手を重ねられた。一緒にフライ反しを握った。
「スキンシップだよ?セクハラじゃないからね」
「セ、セクハラだなんて、そんなのあり得ません」
「そう?」
「はい、…嫌じゃありませんから」
言ってて恥ずかしくなった。消え入りそうな声になる。
どうも優朔は、部屋だと私に意地悪をする。
…困ると知ってて、わざとだ。
「ぅわっ。え?」
今度は後ろから抱きしめられた。腰に腕を回された。背中に優朔の心臓の音が伝わる…。
う、ダメダメ。くっつき過ぎ。
「佳織…、可愛い」
「え?」
頬に唇が触れた。
「あ」
バクバクバクバク…。心臓に悪い。あ、もーー。ダメだ。…焦げしまうぅ…。