奪うなら心を全部受け止めて
「佳織?お風呂、一緒に入る?」
「へ?えーっ?!」
入れかけたハンバーグが口からこぼれた。
「…冗談だよ?…恥ずかしいだろ?俺だって。
一緒に入るのはまだまだ先だな。…色々してからだな」
「へっ」
…変な声ばっかり出てしまう。もう、恥ずかしい。…優朔がずるいんだ。からかって、…色々って。…もう。
「あー、だけど寝るのは一緒な?当然だけどベッド一つしかないし。余分な布団もないからな?これからも布団、ないからな」
……。
今度は変な声さえ出なかった。
…本当、ドキドキして寝られないと思う。
そんな私の気持ち、知ってか知らずか…。
「あー、俺もドキドキして眠れるかな〜。
佳織と一緒だと思うと、寝られないかも」
視線を感じる。
だけど、顔なんか上げたら、きっと目が合ってしまう。
これ以上ドキドキしたら、ご飯も食べられなくなりそう。
そうでなくても、今日はあんなキス…。しちゃったし。
「クスクス。ごちそうさま。俺、先、風呂入るから。佳織、ゆっくり食べろよ?」
「あ、はい」
そう言って頭を撫でるとお皿をキッチンに運んだ。
「あ、後片付けは私がします。大丈夫です」
「そっか?ごめん。じゃあ、置いとくね」
「はい」
ふぅ。きっと私をドキドキから解放してくれようとしたんだ。
あまりにぎこちなくなってしまっていたから。
優朔もドキドキするって…言ってた。…同じなんだ。