奪うなら心を全部受け止めて
料理はすぐに運ばれた。
箸をつけるまでもない。
メインは食事ではない。
「単刀直入に伺いましょう。
仲城さん、貴方は何故、いや、どうしてこんなに長く見守れるのですか?」
「見守る?…。佳織、いや、佳織さんの事でしょうか?
お話は佳織さんの事ですか?」
「はい。貴方と佳織さんの事と言った方がいいかな」
…。先輩の従兄弟という人に。何故、佳織とのことを。
「私が優朔から主に聞いているのは高校生の時の話です。卒業された後は進学先もお互い違いましたよね。
それから特に会うこともしなかった。
ただ、貴方と佳織さんは繋がったままだった。
カムフラージュの恋人としてね。今でも」
「事実、明確に言葉で、もういいとは言われていません。でも、高校を卒業した段階で、それは終わったモノだと思っています…」
「でも今でも気にかけている」
「何が言いたいのですか?
奥歯に物が挟まったような言い方をされてるように思いますが」
「カムフラージュであってカムフラージュではなかった。貴方の想いは初めから本物だった、という事です」
「…。松下さん、貴方はどうなんですか?こうして会うことを私個人でと言われた。
そもそも、私に興味を持った。私の存在が気になった。という事は、貴方にも、何かしら隠した思いがあるのではないですか?」
「面白い。…いや、失礼。流石ですね、頭が切れる。
貴方だから正直に言いましょう。
私は佳織さんが好きです。
初めてお会いしたのは佳織さんが20歳の時でした。
…もう随分経ちましたね」