奪うなら心を全部受け止めて

カラン...コロン。

「...こんばんは」

「あ!佳織さん。いらっしゃい」

「千景...能さんも...」

「よぅ」

「こんばんは佳織ちゃん」

どういう組み合わせ?何故、二人が一緒に?
あ、そうだ。千景に言っとかないといけない。

「千景、ごめんなさい。なんだか解らないけど、優朔が、解除は無しだって、言ってた」

「ああ、知ってる。だから居るんだ」

「へ?」

佳織が今夜、“ここ”に来たからだ、とは言えない。
それは男の、先輩のプライドの部分だ。
行ってもいいとは言えない。行ってはいけないとも言ってない。だから来るだろう。
その佳織をちゃんと送り届ける。

「まあ、どうでもいいよ。Barなんかに来て、...飲むのか?弱いくせに」

「いいでしょ?千景には関係ない。能さんが居るから大丈夫」

あのな〜。だから、お前は...罪の意識はないのか。松下さんはおどけて肩を竦めた。

「いや、俺はもう飲んでしまったので運転もできません。仲城さんに頼ってください」

「だったら俺が送りますから、大丈夫です」

啓司が言う。
それは困るんだよ啓司。困るから俺が居る。

「まあ、たまには送ってやるよ。好きなだけ飲んでみろ」
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