奪うなら心を全部受け止めて

・改めて言う告白


・佳織25歳、優朔27歳 松下のマンション

溺愛気味の優朔にもたれながら、珈琲と大好きなタルト、頂いていた。

はぁ、幸せだ。怖いくらい。
そんな事を思っていた時だった。それは、いきなりだった。
優朔が佳織の両肩に手を掛けた。

「佳織、やり直したいんだ。指輪を外してくれないか」

「...え?な、に...」

能との約束でもある。
指輪を嵌めた行為だけではなく、言葉を直接言ってやって欲しいと言われていた。
俺も、あの夜の告白?決意?はもう一度きちんと伝えたいと思っていた。

あの時の俺はどうしたっけ...。
佳織の手を取り、指輪を嵌め、確かキスをした。
指輪にして、...佳織に。確かそうだった。

そして、識子との結婚式で、一度だけマリッジリングを嵌める事の許しを心の中で請うたんだ...。

これは俺と佳織の唯一無二の指輪。
よし。……って、佳織が泣いている。

「えっ?あ、どうした佳織?」

まだ感動する言葉も行為もしていないぞ。

「...だって...優朔が...。指輪外して、やり直したいって」

はっ。...しまった。

「違う、佳織。違うんだ。誤解だ。あー、説明が足りなかったな。違う。...佳織。違うんだよ」

涙を拭って抱きしめた。

「ごめんごめん。違うんだ佳織。あのな、今から、帰って来た日に佳織としたかった事を改めてするから、泣き止んでくれ、な?
解ってくれた?」

何をするの?何を言われるの?
両腕を持って立ち上がらせられた。
左手を取った。

「帰って来た日の夜。俺は佳織に夢中だった。
...無理もさせた。佳織が眠ってしまったから、この指輪嵌めたけど、何も直接話さずにしてしまった。ごめんな」

「うん。...でも嬉しかった。気持ちは解ったよ?」

俺は頷いた。

「有難う。でも聞いて欲しいんだ。あの時言った事、した事、心の中で言った事、今からするね」

「はい」

...ドキドキする。
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