奪うなら心を全部受け止めて
「なんでだよ。何もないなら、ないに越した事ないだろ?いい事じゃないか。なんだよ、お前、何かあった方がいいみたいに、変な感覚が身に付いたんじゃないのか?」
「いや、それはないけど、なんだか不思議じゃねぇ?」
「だから、お前は何かあって欲しいのか?そう聞こえる」
「そうじゃないけど…」
「高木先輩がきっちりしてるって事じゃないのか?そういうのないように、行き届かせてるんじゃないのか?」
「やっぱ、そうだよなぁ。はあ。男前は何でも出来る!」
「お前…急になんだよ、顎が出てる。1、2、3、ダーッとか、いきなり言うなよ?」
「ぉおお?お望みなら気合いのビンタ、注入しましょうか?」
「遠慮しときます」
「これが気合いの注入じゃ」
「へ?」
パコン。パコン。
「毎度毎度、俺の授業中喋り倒しやがって。後ろだからって、バレてないと思うなよ?」
「げ…すいません」
「席って言うのはな、翔吾。前を向いて座るもんだ。知らなかったんだよな〜」
「…すいませんでした」
クスクス。クスクス。
「解ったら後で化学室の片付け手伝え、千景もな」
「はい、すいませんでした」
「二人共、えー、それとこれは違うだろって顔してんな?これが世の中の不条理だ。じゃ、後で頼むぞ」
「ドクのやつー」