奪うなら心を全部受け止めて


「よし、もういいぞぉ。悪かったな助かった、有難うな」

「はい」

「しかし、仲いいな、お前らは。ま、馬が合うのはいい事だ。中々、巡り会えるもんじゃないからな。一生もんの財産だ。お互い大事にしろよ?お疲れ」

「…はい」



「なんだか今日のドクは語ったな…」

「ん?ああ。不条理とか…な」

「あれは学べって事だよな、世間を」

「ああ、多分。思い通りにいかない、納得出来ない事でも、しなきゃいけない時もある…かな」

「う〜〜ん…。大人になりたくな〜い」

「生きてたらいつかは大人だ、自然にな。もうそこまで来てる」

「あ〜、でも、精神的に大人になりたくな〜い」

「…。我が儘とか言えなくなる、か…。大人の対応を求められる時だってあるさ、きっとこの先…そんな事ばっかりになるんだろうな…俺は財産か?お前の」

「ああ?…。そうだな…。…そうだろ?ずっとな。…そろそろ帰ろうぜ?」

「…おお」

妙に照れ臭い事になった。


教室がザワザワしてる。なんだ?騒がしいな。

「はい、ちょっと待ってください。帰って来ました。お〜い、せ〜ん。早く、こっち来〜い。
すいません、すぐ来ます」

「大丈夫だ。悪いな、有難う」


「なんだ?西邑。あっ」

「君が仲城千景君、だよね?」

見つめられた。…やっぱ凄い男前だ。男の俺でもこんなに見られたらドキッとする。

「はい」

「高木だ」

「はい。解ります」

「そう?この後、少し時間ある?」

後ろからショウが突いて来る。

「はい、大丈夫です」

また突く。…止めろ、馬鹿。
気のせいかな、先輩は少し笑ったと思う。

「少し話せるかな?
後ろの、確か、間違いなければショウ君だっけ?二人一緒でいいから」

ショウは小さいガッツポーズをしている。

「はい。大丈夫です」

「大丈夫です!」

「じゃあ、もう誰も居ないと思うから、三年の、俺の教室でいいかな?」

「はい」

「はい」
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