奪うなら心を全部受け止めて
帰る事を考え、お互い鞄を持ち、高木先輩の後に続いて歩いた。
「二年は何だか、割の合わない待遇だよな?」
思いもよらない問い掛けだった。
「プレハブの事ですよね?」
「ああ、それ。今はまだいいけど、これから暑いし、寒いし、な?
いくらクーラー入れるからって言っても、快適とはならないだろうからなぁ」
「それ、俺らの毎日の挨拶みたいな話題です。でも、はっきり言いませんが、三年生は進学やら就職やらで大変な学年だし、一年生は入って早々プレハブなんて目にあわせられないって…、そういう配慮ですよね」
「そう言ったら二年はどうでもいい扱いになるって、言ってるようなもんだもんな」
「そんなつもりなくても、二年はそうなってしまうんですよ。二年ですから」
「何だか悪いなって、思ってるんだ、俺ら三年だって。学校が決めた事だと言ってもな。不公平だよな?」
「高木先輩のその言葉だけで充分救われます」
「そうか?」
「はい」
珍しくショウが一言も話に入って来ない。静かだ。大人の対応のつもりか?…。
「良かった、誰も居ない。適当に座ってくれ。
何だか三年が教室に行くと、ヤバイ呼び出し掛けてるんじゃないかって目で見られがちだろ?
あれ、何だろうな?みんな漫画とかドラマに影響されてるのかな」
「どうでしょうか」
「今日声掛けたのは、ヤバイ話じゃないんだ。
君にお礼が言いたかったのと、頼みもあるんだ、仲城君」