奪うなら心を全部受け止めて
「まず佳織の事。素直に話せばいいって、相談にのってくれたらしいね?」
「そんな、相談とか…、大袈裟な事ではないです。偶然のお節介みたいなモノです」
「うん、…佳織から詳しく聞いてる、有難う。
それがなかったら、俺と佳織はつき合えてなかったかも知れないから、だから有難う」
「そんな…、お礼なんていいです」
気持ちは決まってたと思う。
「それから、頼みというのは…、勝手な話だけど、佳織の事を護ってやってくれないか?これから先。
いきなりな話だけど…。当たり前だが俺は三年だ。来年には卒業していなくなる。佳織はまだ一年生だ。俺が居なくなってからの方が長いんだ。今は俺が目を光らせていれば、俺の友達も協力してくれているから、まず大丈夫なんだ。…直接のイジメとか、そんなやつ。
だけど卒業してからの事は、どうにも出来ない事があるかも知れない。当たり前だけど、俺、一緒に居てやれないから。
どうだろう、これって頼めるかな?」
「あの、それはずっと…」
卒業してからだと、もう、そんなことはないかもしれないのに。そこまで心配するか。
「俺は、…馬鹿みたいだろ?笑うなよ?
佳織との、ずっと先の事迄考えているんだ。
卒業したら終わりとか、適当に今だけ彼女が欲しかっただけとか、そんなつもりじゃないんだ。
…大学出て、佳織も気持ちが変わらなければ、結婚したいと思ってる。おかしいだろ?会ったばかりの女の子に」
「…いいえ。そんな事ないと思います」
「いや、普通おかしいよ。会って直ぐそんな気持ちになるなんて」
「…何か惹かれるモノがあったんでしょう、お互いに。無意識の感覚って、あると思います」
「仲城君は…」
「千景でいいです。なんなら千でも」
「…じゃあ、千景。千景は女の子らしい事、言うなぁ。メルヘンぽいというか、否、俺が女の子の気持ちとか、恋愛に疎いんだな」