奪うなら心を全部受け止めて
・社長,父親の顔、高木孝朔
「高校生の頃、優朔は一人暮らしをしていた。
あれはあれで、私に対する細やかな反抗でもあったんだ」
確かに優朔は一人暮らしをしていた。訳があるとは言っていたけど、聞く事もしなかった。それが…。
「こんな仕事をしているとね…」
コンコンコン。
「はい」
話は一旦中断された。
「失礼致します。お茶をお持ちしました」
「ん、ご苦労様」
女性は紅茶とチーズケーキをそれぞれの前に置き、頭を下げると下がって行った。
「さあ、遠慮なく。チーズケーキはお好きかな?」
偶然なのか…、それとも、既に私に対するリサーチは済んでいる?
その中の好む物として知っているのか…。
「はい。有難うございます。大好きです、一番好きです」
「それは良かった。私もこれだけは唯一好きなんだよ。さあ、食べよう」
そう言って食べ始めてくれた。
きっとこれは私に対する配慮。
「頂きます」
私もチーズケーキを口に運ぶ。
「美味しい…」
素直な気持ちからだった。
「そうかい?それは良かった」
紅茶のカップを手に取り、一口飲むと、中断された本題に戻った。
「生まれながらの宿命といっても、子供に取っては納得のいかない事…。
TAKAGIが存続する限り、これは繰り返される事なんだが…。
私もそうだったが…、高木の家に生まれて来た以上、どうにもならない事があるんだよ」