奪うなら心を全部受け止めて
アルモノは現実

・ドキドキ、…何?

・佳織7歳

「佳織?今度のお休みにおばあちゃんのお墓参りに行くわよ」

「は〜い」



「雨になるなんて…。やっぱりおばあちゃんね」

「うん。おばあちゃん、雨が好きだったね」

「そうね、…入院してる時も、雨に濡れる緑が綺麗だって、窓から外の木を見てたわ」

「ふ〜ん」

「佳織、水溜まり。こっちに…キャッ、こらっ」

「水溜まり、水溜まり!」

水が撥ねるのが楽しくて長靴でわざと強く歩いた。

「…もぅ。お母さんが濡れちゃうでしょ?」

「ごめんなさい…」

本当にごめんて思っているのだろうか…、ニコニコしてる。小さい子がよくしたがる遊び。

駐車場から少し歩く道程は、緩やかなカーブの登り坂。
道の両脇から大きく伸びた木々の枝には青々とした葉が茂っている。今は雨に濡れ、本来の綺麗な緑を見せている。春先には薄桃色の花が咲いていただろう。

「おばあちゃん、自分の誕生日に死んでしまうなんて…まるでどこかに帰って行って終ったみたい…」

「ふ〜ん。おばあちゃんは生まれて来たとこに帰ったの?」

「んん…。お母さんにもよく解らない。でも、佳織が元気で居るかどうか、ずっと見ててくれてるからね?」

「うん。佳織ずっと元気にしてる。いつかおばあちゃんに会ったら褒めてもらう」

「そうね。元気で居る事が一番…」
< 50 / 216 >

この作品をシェア

pagetop