奪うなら心を全部受け止めて

・ときめく、初訪問

・佳織16歳


「佳織?今日うち来る?」

「え?いいの?」

「もうすぐ期末だろ?数学苦手って言ってたし。解んないとこ、俺で良かったら見るよ?」

「本当?高木先輩」

「……」

「高木先輩?」

「優朔。はぁ…。佳織?二人の時は優朔だろ?」

「あ…つい、習慣で」

「佳織が習慣にしてるだけだろ?俺は優朔でいいって言ってるのに」

「でも…、反感を買いたくないし…、一年のくせに呼び捨てにしてたら、生意気に見えるから…」

「解ってる。そのお陰もあるよな?佳織、キツイ目で見られてないから。だから、だ。…二人だけの時は呼び捨てにしてくれ。手だって…、学校離れる迄はながないって言うし」

「…それは、…」

「それは?何?」

「…恥ずかしいから。嬉しいけど…。恥ずかしいから」

「なぁんだ」

不意に手を繋がれる。…ドキン。

「だったら繋ぐ。こうして手を繋いで歩く事は、卒業迄の俺達の貴重な時間なんだ。
繋がないなんて勿体ない、な?見られてもいいよな?…俺が護るから」

ドキッ。

「ぅん」

「帰り、チーズケーキ買って帰ろう?」

「うん!」

頭、ポンポンされた。

先輩の少し後ろを手を繋いで歩く。少し俯いて歩く。誰も見てないといいけど。きっと顔が赤くなってるから。
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