奪うなら心を全部受け止めて
「…良かった。安心した」
「え?」
「…だってさ。つき合って欲しいって言って、OKの返事は貰っていても、…好きだとは言われてなかっただろ?
俺は好きになったから告白した。俺の気持ちは伝わってるけど、佳織の気持ちはまだ貰ってなかったから。こんなの聞くの、今更遅過ぎって、な」
「高木先輩…」
「…優朔、だろ?…有難う。俺も大好きだ。
おっと大変だ。沸きっぱなしだったな。
座ってて。熱いから俺がする」
頭を撫で、離れた先輩は、お湯を注いでいる。
途端に珈琲の香りが立ち上った。……大人の香りだ。
はぁ…。きっと私の顔からも湯気が上がってる…。
「熱いから…気をつけて」
「…はい」
並んで座ると、マグカップを前に置いてくれた。
ボーッとしていた私は何も考えず珈琲に口を付けてしまった。
「あ!佳織まだ…」
「熱っ!……熱い…」
慌てて痛む唇を押さえた。
「あ、馬鹿!佳織、大丈夫か?水、水、早く冷やさないと」
慌てて先輩が水を持って来てくれた。
「大丈夫か?水ぶくれにならないかな…よく濡らして冷やさないと。口に含んで…」
ガーゼも濡らして持って来てくれた。
「…大丈夫です。ちょっとだけ、一瞬だったし。大した事ないです。
気を付けるように言ってくれたのにボーッとして…ごめんなさい…」
「謝らなくていい、謝らなくてもいいから。
本当に大丈夫か?ずっと濡らし続けてた方がいいから、ちゃんと当てとけよ?ガーゼ」
ガーゼを当てていたからコクコク頷いて見せた。
「ごめんな?さっきは焦ったから、馬鹿って言ってごめん…」
頭を撫でられた。
「ううん、大丈夫。全然平気です。だから、…高木先輩、食べたいです」
「は?佳織…」
「…チーズケーキ、…食べたいです。…タルトも」
「は、…アハハッ。…アハハッ、あぁ…参ったな。佳織が大丈夫なら食べよう?」
「はい!」
「んとに…。子供だなぁ…見た目と違って」