奪うなら心を全部受け止めて

「今までこんな風に、部屋でとか、一緒に過ごした事なかっただろ?て言っても、短い時間だけど。
佳織にとっては普通の自分だから解らないだろうけど、自然にしてる佳織の言葉や仕草が…俺には凄く可愛いんだ。
好きなモノを素直に食べたいと言うし、食べてる様子も。行ってらっしゃいと手を振る仕草も、俺を迎えに走って来た事も。お帰りなさいと言ってくれた事も。
そんな事、普段のなんでもない事って佳織は思ってるだろ?
でも、俺には全てが新鮮で、知る事が出来た事が嬉しくて…上手く言えないけど、とにかくそんな佳織が凄く可愛いんだ。…はぁ。伝わったかな…」

そう言って顔を覗き込まれた。

「はい。…伝わりました」

「ん。…かぁ、恥ずかしぃー」

先輩は頭を掻きながら笑った。


「佳織、好きだよ…」

そう言って抱きしめられた。

「はぁ…遅くならない内に送って行くよ。…そろそろ帰らないとな…」

「…はい」

「よし。帰ろう」

「はい」

「……」

「…ゆ、優朔?」

「佳織、ずるいよ」

「え」

「帰ろうかって言ったら素直に、はいって返事するし、…あんなに呼び辛くしてたのに、帰る頃になって優朔って呼び始めるし…」

「あ…高木先輩、そんな事言っても…」

「ほら、またずるい。先輩に戻ってる」

「うっ…それは偶然です」

チュッ。

…あ。あ。

「頂き!ハハ。困った顔する佳織が悪い。ふぅ…帰ろうか?」

「優朔…。はい、送ってください」

「……もー。…佳織」
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