奪うなら心を全部受け止めて
四人が教室を出て帰るのを見届けた。
「千景、今から俺の部屋に行って貰っていいかな?人気がなくても、誰かが居たら…折角の作戦もパァになって終うから」
「はい」
「悪いな」
「いいえ」
先輩の部屋に着くまで、二人とも無言だった。
俺は緊張と言うより、既に使命感に見舞われていた気がする。
「さあ、何もないけど上がってくれ」
ん?何か変な言い方だけど…。飲み物とかのことか。
「あ、はい。お邪魔します」
ん?…これは…。ない。
「本当に何もないだろ?今日、荷物を出したところだ。…処分したからな」
「あの、先輩。ここは、あ、否、これって」
「ん?ああ、俺は一人暮らししてたんだ。それで、今日は引っ越し…みたいなもんかな…ま、実家に帰るってのが正しいけどね」
俺らは唯一残っていたダイニングテーブルの椅子に座った。
「これだけ、処分は明日なんだ。…千景」
「…はい」
「TAKAGIって会社知ってる?」
「はい、勿論。あのデカイ会社ですよね」
「…でかい…か…」
「あの、もしかして」
「…ああ。俺はそこの息子なんだ」
高木だもんな…。今更だけど。
「…何から話したらいいか。佳織にあんな事があったから、正直、今はまだ、…あんまり冷静じゃないんだ」
先輩は、御曹司って事だ。