奪うなら心を全部受け止めて

「悪い…。少し一人で歩いたら、冷静になれるかもと思ったんだけど」

「あ、はい。俺、…よく解りません。変な言い方かも知れませんが…」

渡された缶は置いた。

「いいよ。思うこと言ってくれて」

「その、…佳織ちゃんは結婚迄の…遊びという事ですか?自由な間の恋愛を楽しむ対象に選んだのですか?…すいません」

「否、そういう風に考えるよな。あんな話をしたら無理もないと思う」

「そうなんですか?」

「それは違う。遊びなんかじゃない」

「でも…、無理があるじゃないですか。先輩は結婚するんですよね?その決まっている相手と」

「…そうだ。これは変えられない事なんだ」

「だったら…ぇえ?…どうなるんですか?佳織ちゃんは」

「佳織とは、俺が結婚しても…変わらない。
俺の大事な…人だ」

「解らない…奥さんが居ながら、つき合い続けるんですか?…え?…そういう事ですよね?」

「そうだ」

「…そんな。それって、まるで…」

「…」

「まるで…愛人じゃないですか」

「…そうだ。…言い方はそうなる」

「そうなるって…言い方って、そんな…。酷い…。何言ってるんですか。
酷いじゃないですか。そんなの佳織ちゃんが可哀相だ。…そう思いませんか?先輩は…酷い。酷い人だ。…愛人にするんですか?佳織ちゃんを」

愛人なんて…。高校生の俺らが使う言葉でもない。…大人の話だ。

「そう言われても仕方ない」

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