奪うなら心を全部受け止めて
「…そうだな。千景の言う通りだ。
俺のしようとしている事は我が儘で卑怯な事だ。自分本意で最低の男だ。
だけど好きなんだ。佳織の事が好きで好きで仕方ないんだ。俺だって佳織だって、子供だよ。まだまだ自分達で何も出来ない。まだ子供だ。
…俺が、誰も本気で好きにならなければいいんだよな。自分のおかれてる立場を考えて。
そんな事は…何度も何度も、…納得させようと、…自分に言い聞かせようとしたんだ。
だけど、佳織だけは駄目だった。知れば知る程、愛おしくて仕方ない。忘れる事は出来ないんだ。……千景…」
「…はい」
「ただ好きなんだ。佳織の事が好きなんだ。…それだけなんだ。好きになるのも駄目か?否…解ってるんだ。好きになっても、言わなければ良かったんだよな…。
口に出さず、押し込めたら良かったんだよな…。今まで告白した事はなかったのに…。
大人の対応が出来たら良かったんだよな…」
…。
「先輩…。俺はどんな風に佳織ちゃんとつき合えばいいですかね?
少しは一緒に帰ったりしないと駄目ですよね?
手を繋いだりもしますよ?先輩、妬かないでくださいよ?
これはカムフラージュ大作戦なんですから」
「…千景」
「……俺は第三者なんですよね。どんなになにを言ったって。…すいませんでした。感情的になって終って。口出しする事じゃないんですよ、俺が。辛いのは当事者なのに…。
俺は、俺に出来る事、します。…それでいい。
今出来る事。今はそれしかできないから。
先輩の言葉、覚えておきます。だから、佳織ちゃんを護ります」
「…千景。すまない。…すまない。…ごめん、千景」
「あ…、もう、佳織ちゃんにも告白してたんだった。…撤回すると、フって終うところでしたよ?先輩。
…コーヒー、頂きます」
「千景、…有難う」