奪うなら心を全部受け止めて

「佳織ちゃん、一緒に帰ろ?」

俺は佳織ちゃんがトイレで濡らされた日の翌日から、早速一緒に帰る事にした。
果林ちゃんと直人君も一緒に教室を出る。
流石にざわついているのは解った。


「大丈夫か?」

俺は佳織ちゃんにそっと耳打ちした。

「あ、はい。今はまだ何も。噂は色々と流れてますけど」

佳織ちゃんも小さい声で囁くように返して来た。
話は帰りながらしよう。


「果林ちゃんは果林ちゃんって呼んでいいよね?」

「はい!勿論です」

「直人君は…」

「直人でいいっす。直人って呼んでください」

「そう?じゃあ、直人」

「はいぃ!…嬉しいっすぅ」

「おいおい…、果林ちゃんはカムフラージュで、実は…って事、ないよな?」

最近…コッチかって話す事、多いな…。

「ないです、ないです。俺、果林の事、好きですから」

「やだぁ…、直人」

「でも、それはそれで、…これはこれでというか、仲城さんカッコイイから、一緒に居られるの凄い嬉しいっす」

「そ、そうなん?…」

「はい。あ、すいません。俺ら、こっちなんで、此処で。じゃあ、佳織ちゃん、また明日」

「うん。果林ちゃん、直人君、バイバイ」

「じゃあな」

「はい。佳織、また明日ね」

……。


「二人になっちゃったね?さ〜て、佳織ちゃん。早速だけど、手、繋ぐよ?」

「あ、はい。宜しくお願いします」

「あ、堅い、堅い。あ〜、まだなり立てホヤホヤだから、堅くていいのか…。うん、うん。
こちらこそ、宜しくお願いします、だね」
< 81 / 216 >

この作品をシェア

pagetop